ユングのタイプ論(分析心理学)の基本的な見方【学習メモ】

カール・グスタフ・ユングの「タイプ論(分析心理学)」についてまとめた記事です。

もし「ユング心理学の本を手にとったけど難しくて読めなかった」という方がいらっしゃいましたら、理解の手すりとして読んでみて下さい。

途中にやや抽象的な話題もはさみますが、タイプ論の骨格は押さえられると思います。

エネルギーの向き×意識の機能

ユング心理学では人間の心を「エネルギーの向き」×「意識の機能」という風に分類します。

エネルギーの向きというのは、外向型・内向型、という分け方です。外向型は外の対象に関心が向いているとし、内向型は自己に関心が向いている、という風に分類されます。

あの人は外向的な性格、この人は内向的な性格、という表現を一度は耳にしたことがあると思いますが、この表現はユング心理学が由来です。

注意したいのは、この分類はあくまでも傾向であって、外向型だからといって自己に全く関心がないというわけではないという点です。

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「意識の機能」というのは、思考・感情、直観・感覚という4つに分けられます。ポイントは「思考ー感情」で一対、「直観ー感覚」で一対としていること。

思考は、概念や事象同士に繋がりを見出すこと(晴・雨・曇は全て「天気」に関係すると一括りで認識するなど)、感情は好き嫌いを判断する機能。

直観は、知覚したものに対して、半ば無意識的につながりを見出すこと(いわゆる「ピンとくる」類のものだと思います)。一方の感覚は、五感から入力された情報をそのまま知覚すること。

意識の機能をまとめると以下のようになります。

思考ー感情:意識的な機能
直観ー感覚:無意識的な機能

思考&直観:繋がりを見出そうとする機能
感情&感覚:ありのまま受け取る機能

フロイトとアドラーの違いに注目した

内向型・外向型というエネルギーの向きと、思考ー感情・直観ー感覚という意識の4つの機能を考え出したユング。

もともとの着想は、ジークムント・フロイトとアルフレッド・アドラーという精神医学者(先輩的な存在)が異なる心理学を提唱したことにあります。

アドラーはもともとフロイトに師事していましたが、フロイトの提唱する「エディプス・コンプレックス」という理論では不十分だと離反し「個人心理学」を立ち上げました。

ユングは、師事→離反という流れに対し「なぜ異なるタイプの概念が生まれるのか?」という疑問を持ち、相対する概念がどのようにして共存していくのかを調べていくことになります。

大まかな流れとしては、フロイトが作り上げた基礎をアドラーが超えようとし、今度はユングが二者の理論を超越しようとした、という具合です。

対立するもの同士の統合を目指す

そうしてユングは「人間の内には相異なるタイプの精神が同居しており、その統合を目指すべき」と考えるようになります。

注目すべきは、この「対立」を個人の問題ではなく社会全体の問題として捉えたことです。(個人の内にある)精神の対立、宗教の対立、国家の対立など、相反するもの同士がどのようにして統合されていくのかを、歴史全体を俯瞰して分析しています。

やや抽象的な話になりますが、かつて「精神があるから物質が存在するのか、それとも物質が先にあって我々の精神が存在するのか」といった論争が繰り広げられていた時代がありました。

ユングはこれを、アベラールという哲学者の提唱する「魂」という概念で括られていくと見ています。魂によって、精神と物質が出会う(そしてその体験はファンタジーである)という。

相対する概念がバチバチと戦っていると、それを結びつける第三者が登場してくる、という流れがあることを歴史の中に見出したんですね(そうしてまとまるかと思いきや、第三者はまた新たな対立を生むようです)。

心の病は社会現象?

ここから先はぼく個人の感想です。

心の病は、個人に要因を帰属させるのではなく、もっと広い視野で捉えたほうがよいなと思うようになりました。

ユングがタイプ論を編み出した時代、世の中は第一次世界大戦を迎えました。ユングは大戦の直前、ヨーロッパに多くの血が流れることに頭を悩ませ、精神的にもかなり追い込まれていました。

医学に従事していたら、多くの怪我人や死者が出る想像なんてしたくもありませんよね。未来ある若者が兵士として戦場に出向き、最悪の場合は帰らぬ人となる。国のお金も武器の購入や開発に費やされていく。

戦闘に役立つ数学・科学の発展は望めるかもしれませんが、学者としては平穏に研究活動に勤しみたいはずです。いったいどれだけ追い込まれていたのかは測りかねますが、祖国が血の海になるのは誰でも嫌なはずです。

「わたしが暮らしにくいのは社会のせいだ!」と丸投げしてしまっては本末転倒ですが、自身と社会との間に注目していく視点は、心の病を考える上で超重要だと思います。

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ユングは自身の精神的危機を、自らイメージした人物像との対話によって克服したそうです。自身の内にある無意識を掘り起こして、相異なるタイプの精神を顕在化(そして統合)させていったのだと思います。

そしてなんと、ユングが自身のイメージと対話した記録が欠かれた書物が『赤の書』というタイトルで2009年に出版されているようです。4万円強とめちゃくちゃ高額ですが、鼻血ものです(笑)

まとめ

ここまで読み進めて下さってありがとうございます。
ユングの「タイプ論」の骨格は押さえられそうでしょうか。

改めて振り返りますと

・エネルギーの向き × 意識の機能
・対立する概念の統合(をかなり広い視野で見ている)

この2点に、ユング心理学を読んでいくポイントが集約されると思います。

レッツ心理学。

ABOUTこの記事をかいた人

編集者。メディアづくり・チームづくり・コーチング(編集の)が得意。生きづらさを市場化すべく試行錯誤中。薬を飲むの苦手、手数の多い単純作業苦手、声の大きい人苦手、飲み会苦手。根性叩き直し中。目標はリオネル・滅私。