宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み 〜自分と書籍の関係性を紹介してみたⅠ〜

どーも、えーたです。

いやー、久しぶりの更新です。ふぅ。
なにか新しいことをやってみたい、というわけで、書籍の紹介にトライしようと思います。
ただ紹介するだけでは面白くないので「書籍と自分の関係性」を綴っていくかたちにします。

本日紹介する本は宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み (日経ビジネス人文庫)という本です。著者は宮大工の西岡常一氏。

 

いつ出会ったのか

この本と出会ったのは、たしか大学3年生の春〜初夏のあたりです。未だ蝉が鳴き始めるまえのころだったと思います。就職活動を前にして「自分のやりたいことって何だ?」といった疑問に答えられずに焦っていたような気がします。

 

人生で最も大きな買い物は家だ。→じゃあそれを自分でつくろう→大工になろう→大工でいちばんは宮大工だ。→宮大工になろう。と、超安易に考えたことをキッカケにこの本を手に取りました。宮大工がどんな仕事なのかも全く知らずに「宮大工」とgoogle検索をして、検索結果にでてきた書籍を購入し、読みました。それが「口伝の重み」でした。

 

 

どんな影響を与えられたのか

この書籍を読んでぼくは大学3年の夏の「テーマ」が決まりました。就職活動前に、「本物に触れること」「木と森について知ること」をテーマに一人旅をすることになりました。超安易にしかものごとを考えていませんでしたが、結果として、この一人旅をキッカケにいろいろのことが動き始めたような気がしています。

 

「本物に触れること」というのは一流の人が手がけた建造物を自分の目で見て、肌で感じて、といった風に「五感で感じる」ことです。ネットで調べた情報や写真で見たものと、実際に触れたものとでは情報量が圧倒的に違います。大学のある石川県からいちど実家の新潟県へ帰り、青春18切符を片手に奈良県へと向かいました。

 

西岡常一氏が手がけたという「法隆寺」「薬師寺」を見にいきました。正直に言うと本物どうこうはちんぷんかんぷんでしたが「とりあえず目に焼き付ける」ことをしました。ほかにも東大寺や春日大社などを見にいき、京都へも出向いて工房見学にいったりもしました。

 

するとなんとなく「共通している点」を見つけることができました。屋根の構造とか、瓦の文様の雰囲気とか。奈良県、京都府の次は岐阜県へ行き、森の散策ツアーに参加しました。木のこと・森のことを学ぶためです。そのツアーでは森が完成されていくまでの過程を、森の中を歩きながら学ぶことができました。

 

砂漠のような、何もない土地には赤松などの針葉樹が生えてきて、やがて日陰ができるようになるとそこに適した種(しゅ)の木が生えてくる。鳥が糞をして、そこに植物の種(たね)があれば果物などの木が生えて、虫たちがあつまれば花粉の移動が起こる。そうして森は多様になっていくんですね。

 

また針葉樹(葉が針のようなかたちの木)と広葉樹(葉が広がるようなかたちをしている木)はそもそも別の生き物であるとか、たくさんのことを知りました。森林の機能的な美しさにたいそう感心したものです。

 

たった一冊の本をキッカケに、こんなにも動き回るものなのだなぁと、振り返ってみて思います。

 

 

心に残ったポイント

この本を読んで最も心が震えたのは、西岡常一氏の仕事に対する姿勢です。日本最古の木造建築である「法隆寺」は、築1300年以上の歴史を誇ります。放っておいて勝手に残るような年数ではありませんね。1300年前なんて、全くもって想像できません。同書によると、法隆寺は1934年より約半世紀「昭和の大修繕」と呼ばれる大掛かりな修繕をされており、西岡氏もここに深く関わっています。

 

修繕中には第2次世界大戦がおこり、彼(西岡氏については深くは知りませんが、表現を簡略化するため“彼”と表記します)は兵役に服します。戦争については話で聞いたことしかありませんし、実際にどれだけ緊張感があるのかわかりません。命がけの現場の緊張感は、相当消耗するものだと想像します。

 

同書の一節には、彼は兵役から戻ると、即座に仕事に戻ったとのエピソードが記されていました。普通は兵役から帰ってきたら休むんじゃないかと思うのですが、即仕事、という仕事への熱意。ちょっとうまく表現できませんが、いったいどれだけ仕事に対する熱意があるのかと、とっっても感動したのを覚えています。自分も、こんなに熱が込められるものを見つけたいものだと思った記憶があります。

 

 

まとめ

一冊の本が、人の心をガツンと動かし、アチラコチラへと動かしてしまうパワーがあることを知りました。ライティングの仕事をしていて思うのですが、文章を書くのはなかなか知的な行為です。特に、物語を整った状態で書き上げるのは相当な編集能力が必要になります。書籍の編集をしている方なんかは、編集能力がむちゃくちゃ高いのではないでしょうか。

 

そんな苦労があってでき上がった本には、パワーが込められているのも当たり前だなぁと、振り返ってみて思ったのでした。

ABOUTこの記事をかいた人

編集者。メディアづくり・チームづくり・コーチング(編集の)が得意。生きづらさを市場化すべく試行錯誤中。薬を飲むの苦手、手数の多い単純作業苦手、声の大きい人苦手、飲み会苦手。根性叩き直し中。目標はリオネル・滅私。