文章力を鍛える方法を、5年目のライターが本気で考えてみた

文章力というテーマは大変に難しい。そもそもが曖昧であり、正解がわからない。ゆえに鍛える方法も不明瞭。

しかしある程度の道筋はあるはず。そう信じつつ、過去の経験を振り返りながら鍛え方をまとめた記事です。

文章力の定義

当記事では文章力を、”伝えたい内容に対して、適切な言葉を適切な順番で並べられているか”と定義します。文章力の表す範囲が広すぎるためです。

「文章力とは何か?」をいちど考えてブログ記事にもしたこともありますが、筆者の実力不足で「わからない」という結論にいたりました。知らないことが多すぎました(関連記事|文章力がわからない。

そこでいったん、”伝えたい内容に対して、適切な言葉を適切な順番で並べられているか”を文章力の定義として仮置きすることにしました。これを目標として、鍛える道筋をご案内できたらと思います。

情報発信の必要性に駆られていたり、メールやチャットにおけるコミュニケーションに苦手意識のある方を想定しています。小説家クラスを目指す方にとっては、あまり有用ではありません。

これまでの執筆・編集経験や読書経験を振り返りながら

  • 単語の芯を捉える
  • 縮約 or インタビューに取り組む
  • 文章の【見やすさ】に気を配る

の3つに分けて紹介していきます。

単語の芯を捉えること

文章は何によって構成されているでしょうか。そう、単語です。単語の連なったものが文章です。文章に強くなろうと思うなら、まずは単語の中心的な意味を捉えること。

芯を捉えると表現しているのは辞書に書かれている意味だけでなく、その文章における意味合いを的確に捉えるというニュアンスも込めたかったからです。

これまでの仕事(ライティング・編集)では「どのように書いたら内容が伝わりやすくなるか」の1点に注力してきました。内容が伝わることがスタートラインだと考えるからです。
 
突き詰めていった結果として「単語のひとつひとつに対して、芯を捉えること」が読み書きの根幹にあるものだと考えるようになりました。特に注目しているものは動詞。主体の動きが微妙に変化するためです。

些細なことですが、だからこそ放置してはいけないというのが持論です。イメージしている内容と用いる言葉との剥離が連続すれば、本来伝えたかった内容とかけ離れた文章ができあがってしまう恐れがあります。

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鍛えていく方法は、大きく分けて3つ。

  1. 辞書を引き、原義や言葉の成り立ちに迫った上で現在の用法に触れる。
  2. 背景を想像・推測しながら相手の話を聞く
  3. いい文章を読む

1|辞書を引き、原義や言葉の成り立ちに迫った上で現在の用法に触れる。

国語辞典やジャパンナレッジ(JapanKnowledge)等の辞書を参照して原義を確認します。次いで『白川静 常用字解』のような漢字の成り立ちに迫れる書物を参照し、文字が生まれた原風景を想像します。

そして現代に舞い戻り、用例も踏まえつつ言葉づかいを決めます。単語という器があったとして、そのなかに入れる情報量を増加さていくイメージです。

2|背景を想像・推測しながら相手の話を聞く

対話の中で情報量を増加させていきます。相手が放っている言葉に含まれる意味やその背景をなるべくたくさん浮かべます。

例えば「今日はYouTubeを2時間も見てしまった」とあなたの友人がいったとします。「つい〜しまった」という言い方から、理想通りにいかなかったのだと推測できます。

上手くいかなかったものは、仕事か家事か他の用事か。休憩のつもりで見たのか何となく開いたのか。色々なことが考えられます。このような具合に、相手がアタマに浮かべていそうな内容を察知していく方法です。

先の例でいえば、理想的な状態(ちょっとだけ休憩するなど)と「YouTubeを2時間視聴した」という現実とを比較して「失敗した」という意味付けをしていることが伺えます。

理想と現実のギャップを嘆いた失敗談です。

3|いい文章を読む

これは「自分にとって」いい文章に、たくさん目を通すことです。肌感覚で構いません(自己啓発系は避けたほうがよいかもしれませんが…)。

最もよい例はおそらく小説ですが、筆者は小説を読むのが苦手です(登場人物の名前や特徴が覚えられない)。目を通したことがあるのは、夏目漱石、稲垣足穂、筒井康隆、村上春樹、伊坂幸太郎、くらいです。

「読む」ではなく「聞く」という意識に切り替えると多少は読みやすくなりましたが、苦手意識は消えておりません。

「なぜだかわからないけど心地よい」という感覚になる文章に出会ったら、それを読み込むのがよいでしょう(個人的には松岡正剛さんの「千夜千冊」を頼りに選本をしています)。

縮約・インタビューに取り組む

「単語の芯を捉える」ことは一朝一夕では身につきません(し、筆者も日々勉強中です)。文章のまえに単語がある、と覚えておくことが大切。その前提を持ったうえで、書くトレーニングへと進みます。

既にある文章の縮約、あるいはインタビュー原稿を編集することが効果的です。伝えたいことの読み解き、提示する情報の選択や提示順の決定、執筆という一連のプロセスを体験できます。

1|縮約

縮約というのは、既にある文章を、内容や表現を維持したままに短くすること。大野晋さんの書かれた『日本語練習帳』では

縮約とは、要約することや要点をとることではなく、地図で縮尺というように、文章全体を縮尺して、まとめること。

と説明されています(WEB上にあるものでは公文式に細かな説明がありました)。〇〇について説明されている、筆者の主張は××だ、という具合に要点を説明するのでなく、文章の丸ごとを縮める作業といえるでしょう。

同書のなかでは、新聞の社説を400字ピッタリに縮尺するトレーニング方法が紹介されています。

取り組んでみたところ、時事的な事柄を理解するためには調べものが必要で、その過程で力が磨かれていくと感じました。

2|インタビューに取り組む

インタビューはご存知だと思います。いくつかの質問をして、それをまとめて読みやすい体裁に整えることです。

友人や同僚(あるいは上司)に時間をもらい、他己紹介用の文章を作成するのはいい訓練になると思います。15分ていどのインタビューを実施し、250字くらいにまとめます。

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筆者は縮約のトレーニングはあまり経験がありません。インタビューの実施や原稿の編集を通して、似たような経験が積まれたと思います(実施は50本、編集作業は100本ていど)。

インタビューの実施相手は、大学生、大学院生(ロー・スクール)、コンサルタント、ファシリテーター(研究所)、デザイナー、元ひきこもり、語学学校の経営者(日本、韓国、アメリカ)、元牧師、マジシャン、とさまざまです。

インタビュイーに楽しんでもらいつつ、読者にとってもよい情報を話してもらうにはどのような質問をするとよいか。またその順番は、用いる言葉は何がよいのかを考える訓練になったと思います。

質問の言葉によって、登場する情報が大きく変化することを実感できました。

縮約とインタビューに共通するのは「言葉の中心を捉える」力が磨かれることで、そのエンジンは問いを立てる力。書くトレーニングといいながら、その根っこにあるのは質問力なのかもしれません。質問力と構成編集力の組み合わせが書く力といえそうです。

文章の見やすさに気を配る

最後に、見落としがちな点を紹介します。それは「見やすさ」です。

Twitter・Facebook・instagramなど、SNSの登場によって誰もが情報発信できる時代になりました。また街を歩いても、電車・バス・タクシーに乗っても、どこもかしこも広告だらけ。現代は視線の奪い合いが繰り広げられています。

このような環境になると何を見たらいいのか自分で判断するのが難しくなります。「見にくいものはムダ」と判断するようになるでしょう。WEBページを読むにしても、サクッと読みたい願望があると思います。

となると「見やすさ」にも気を配る必要がでてきます。よっぽど内容が面白ければ筆の力で最後まで読ませられますが、得策とはいえません。

見やすくする方法は媒体によりけりですが、ブログに関しては「見にくくなる要因を排除する」という観点から考えていきました。

「ぎゅうぎゅうに詰まっていること」「役割が不明瞭であること」の2点がその要因だと結論づけています(関連記事|ブログの文章を見やすくするコツをデザイン素人なりに2つに絞った)。

上の記事では「行間・字間の調整」「記事のパーツ毎(タイトルや見出し等)の役割を明確にする」といった取り組みを紹介しています。

その他には、漢字は二字を越えて連続させないとか(熟語として成立する場合は除く)。改行の調整なども挙げられます。

自分のメールやチャットを見返してみると

  • 会話っぽい場合、25~35文字くらいで改行
  • 長い文章は、120字くらいで一回ぶんの改行

といった特徴がありました。話題が変わる、息継ぎをするなど、読んだときの感じ(肌感覚)で改行しています。

内容をしっかりさせながら見やすさにも配慮することで、より伝わる文章になるはずです。

まとめ

おつかれさまでした。最後まで読んでいただきありがとうございます。

4000字ほど書きましたが、とにもかくにも「単語の芯を捉えるぞ」という心構えが最初の一歩になると思います。

読み書きは誰でもができると思われがちですが、ちょっと上手く書こうとすると意外と難しいもの。少しずつレベルアップを目指しましょう。

紹介書籍

日本語練習帳 大野晋 岩波新書 
白川静 常用字解 第二版 平凡社

ABOUTこの記事をかいた人

編集者。メディアづくり・チームづくり・コーチング(編集の)が得意。生きづらさを市場化すべく試行錯誤中。薬を飲むの苦手、手数の多い単純作業苦手、声の大きい人苦手、飲み会苦手。根性叩き直し中。目標はリオネル・滅私。