フロイト・アドラー・ユングの共通点と理論まとめ

こんにちは。

当記事では、ジークムント・フロイト、アルフレッド・アドラー、カール・グスタフ・ユングの共通点と違いを紹介しています。主張内容、発想の起点、理論確立の経緯がつかめるようにまとめました。

始めに読み進めていくためのポイントを押さえ、次いで時代順に、フロイト・アドラー・ユング の特徴をそれぞれ紹介しています。

それでは、どうぞ。

「無意識」の働きに迫る

三者の共通点は、神経症(心の病)の治療を目的に、無意識の領域で起こっているメカニズムを解明しようと試みたことです。

精神医学の起こりが19世紀のはじめころで、それまで西洋においては「精神の世話人は神である」という考えが主流でした。

18世紀ころになると「精神は人間自身が世話をするもの」という考えが徐々に浸透していきます。やがて心の病を治療する手法が模索されるようになり、無意識の領域が注目されるようになりました。

「人が心の病に陥るのは、無意識の領域で何かが起こっているためである。よって、無意識的な心の働きを解明し、意識できるようにすることで、正常な働きを取り戻す」。これが精神医学の目的だと考えられます。

無意識の解明をめぐり、フロイト、アドラー、ユングの三者によって、各々の理論が組み立てられていきます。各々の理論を読み進めていくために必要なキーワードを整理すると、以下の通りになります。

フロイト→ エディプス・コンプレックス
アドラー→ 劣等感
ユング→ 対立の克服(統合)

フロイトの理論

フロイトの、人間精神に対する考え方は「人は、自身についてすでに知っているにも関わらず、それを知らないでいる」というもの。

人間精神には無意識の領域があり、自分自身に関することが、自分の知らない間に語られている。ということです。その語りの内容を掘り起こし、解析することで、治療の方針を示していこうと考えました。

もともとは催眠による治療法が始まりで(神経科医のブロイエルという人物の催眠療法を参考)、数々の患者を観察していく間に、無意識に迫る方法としての「自由連想法」を編み出しました。

またフロイトは、人間精神の働きの核となるものに「エディプス・コンプレックス」を提唱しています。以下、日本大百科辞典に掲載された内容を要約したものを掲載します。

エディプスコンプレックスとは(日本大百科辞典(JapanKnowlege)より)

【男の子の場合】
男の子は3歳から6歳にかけて父親に敵意を抱き、母親に対して愛情を求めようとする性的願望をもっている(エディプス期または男根期と呼ばれる)。

男の子は父親に敵意を抱くために、報復として去勢されるのではないかと考える。この恐怖によってエディプス的願望が抑圧され、エディプス・コンプレックスは克服される。

しかし思春期には身体の成熟と共に性的衝動も強くなり、エディプス的願望も復活する(その願望は他の異性に向けられることによって克服される)

【女の子の場合】
女の子は去勢されており、男根羨望(せんぼう)をもつ。母親を敵視し、父親の愛情を独占、男根の代理として赤ん坊を獲得しようとする。

フロイトは、精神の働きの核となるものは「性」であるという見方をしています。

これはぼくの見方ですが、男性には男性の、女性には女性特有の精神発達や精神の働きがあり、それを正常に戻すことが精神治療である、ということなのだと思います。

性を出発点にした願望が、表れては克服され、また表れては克服されて精神が成熟していく。心の病を抱える方は、過去のどこかで克服し損ねている。こういう見方が根本にあるのでしょう。

ちなみに父を敵視し母に愛情を抱くという精神の働きは、ギリシア神話に登場するエディプス王の運命(父親を殺害して母親と結婚す)を参考に考えられたそうです。

アドラーの理論

アドラーが注目したものは「劣等性」でした。精神医学を志した当初はフロイトに師事をしていましたが、「性」を中心とした見方では人間精神の説明がつかないと考えるようになりました。

人には普遍的に劣等性があり、それを克服するために活動をするという仮説を打ち立てます。劣等性の克服にはある「目的」が設定されるが、その目的が誤っているときに神経症(心の病)が生じる。というふうに分析しています。

フロイトとの大きな違いは、神経症(心の病)の原因が、過去の体験にあるのではなく、現在の目的にあると捉えていることです。

このフロイト的な立場を原因論とよび、アドラー的な立場は目的論と呼ばれますが、これは精神医学の発達によって生まれたのではなく、プラトンやアリストテレスといった哲学者を参照しているそうです。

世の中のできごとをどう捉えるか?という作業は過去の哲学者がたくさん取り組んで下さっているので、それを参照して精神医学に取り入れたのですね。

「人間精神という、目に見えないものをどう捉えるか?」という課題に対してギリシャ哲学の枠組みを参考にしているということです。

なぜギリシャ哲学を参考にしたのかといえば、フロイトやアドラーやユングの出身地が西洋だからという側面が大きいのだと思います。

東洋哲学(儒学や仏教哲学など)を参考にすると、また異なる心理学生まれてくると思います(世の中の捉え方の枠組みそのものが違うので)。

ユングの理論

ユング理論の中心にあるものは「対立の克服(統合)」です。

この発想は、フロイトとアドラーの違いに注目し「なぜ異なるタイプの心理学が登場してくるのか?」と考え、かつ両者の理論を越えようとしたことに始まります。

もうひとつの要因は、第一次世界大戦という社会状況です。ユングは「ヨーロッパが血の海になる」という不安から、精神的に追い込まれていました。

また自身の内に相反する性格タイプが混在していることを自覚しており、精神的危機の克服と、異なる性格タイプの統合が課題となります。ユングはこの課題を、自身よって仮想した人物像との対話によって切り抜けました。

その対話を学術的にまとめた書物が『心理学的類型論』で、人間精神を、エネルギーの向き(外向型・内向型)と意識の4つの機能(思考—感情・直観—感覚)の掛け合わせとして捉えています。

性格傾向を分類をすることで心の病を体系化し、治療方針を明確にすることが目的です(ユング心理学は性格判断や適性検査に用いられいてるようですが、元々の目的は治療法の確立にあったことは覚えておきたいですね)。

まとめ

お疲れさまでした。めちゃくちゃザックリまとめますと、

・性のフロイト
・劣等性のアドラー
・対立克服のユング

こんな風に略すと覚えやすいかもしれません。中心的な学問領域は、神学、ギリシャ哲学、精神医学、心理学になると思います。以下に当記事を作成するにあたって参考にした書籍を紹介します。

【参考書籍】
・『フロイト 精神分析学入門Ⅰ』 懸田克躬訳 中央公論社
・『フロイト 精神分析学入門Ⅱ』 懸田克躬訳 中央公論社
・『人はなぜ神経症になるのか』  岸見一郎訳 星雲社
・『ユング 心理学的類型』    吉村博次訳 中央公論社

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編集者。メディアづくり・チームづくり・コーチング(編集の)が得意。生きづらさを市場化すべく試行錯誤中。薬を飲むの苦手、手数の多い単純作業苦手、声の大きい人苦手、飲み会苦手。根性叩き直し中。目標はリオネル・滅私。