ドンドコドン、ドンタカタ。
これも立派な文章。
文章には正解が無い。
だからこそ不安がつきまとう。
憑き物を取り去りたいという思いが募る。
執筆とふたつの不安
文章を書くときにつきまとう、なんとも言えないあの引っかかる感じ。経験的には下記の二つにわかれると考えています。
・読んでもらえるかな、、、という不安
・自身の語彙・技量に対する不安
文章を書くうえで「読んでもらえるか否か」という不安は常につきまといます。テキストによる読み手との関係づくりですから、人間関係の悩みといっても過言ではありません。
はっきりいって自分でコントロールするのは不可能です(読みやすくする工夫はできますが)。自分自身の努力によって克服可能なものは、語彙・技量に対する不安。
当記事では日本語の基礎と表現への入り口に合った本(練習問題つき)を紹介します。
日本語練習帳
日本語研究者の大野晋さんが、学生や社会人が日本語を適切に扱えるようになるにはと考え、練習帳の形式をとって書かれた本です。
他の言語と比較した上での、日本語の際立った特徴がコンパクトに纏められています。
「は」と「が」の違い、モノゴトを見る角度によって言葉が変わることなどが冒頭にあり、モノゴトの捉え方と言葉との関係から始まっています。
「自分自身の見方が言葉に現れる」といった切り口を起点に、日本的な世界観にまで言及する箇所もあります。
練習問題は、全部で38の練習問題(お題の数は45問)があり、すべてに回答し採点すると自分の力量がわかるようになっています(私は215.5点/250点満点で、ギリギリA判定でした)。
私はこの練習問題に回答することで、日本語への不安が軽減されました。文法や品詞の種類や特徴は未だ勉強不足ですが、最低限の理解は得られたと思っています。
全問題を回答したからこそ全力でおすすめできる1冊です。
高校生のための文章読本
さまざまな文章表現に触れられる+表現についてちょっと深く考えられる一冊です。文章表現への入門書的な位置づけになるでしょうか。
現行の教科書(第一刷の出版年である1986年当時)に採られていないことを原則とし、さまざまな作家の文章が紹介されています。
グルーピングの基準は文章を書く人の「動機」や「意識の働き方」。
作品選びの方針がとてもユニークで、読んでみるとバラエティに富んでいることがすぐにわかります。
個人的には筒井康隆(つついやすたか)の『バブリング創世記』という作品は衝撃的でした。
ドンドンはドンドコの父なり。ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み、ドンドコドン、ドコドンドンとドンタカタを生む(p.32より一部を引用)。
このような記述が延々と続きます。創世記という書物(旧約聖書の第一巻)の構造と、ジャズのバブリング(スキャットという唱法の一種)とを組み合わせて書かれた作品です。
見開き1ページにびっしりとカタカナが並んでいるので、初見からびっくりします。音読していくとバブリングの“感じ”が伝わってくるのでジャズを楽しんでいる気分にもさせてくれます。
この作品の設問は
単調な繰り返しと見える中に、思わぬ楽しい仕掛けがある。気がついただろうか(p.33)。
というもの(私は1つだけ気づきました)。
解説文には模範解答のほか、“仕掛けだなどとは考えず、「ギャハハ!」と笑った君は実に音楽的センスがある。”とも書いてありました。
文章読本なのに読み手の音楽的センスに言及するんです。とっても愉快じゃありませんか。
文章力≒表現力と捉えているのなら、さまざまな表現方法に触れるという意味でおすすめです。頭から読んでも途中から読んでも楽しめますし、なにより文章表現の自由さを肌感覚で理解できますよ。
●高校生のための文章読本 編者 梅田卓夫 清水良典 服部左右一 松川由博 筑摩書房
まとめ
僭越ながら、日本語の基礎と表現への入り口、それぞれの入門書を紹介しました。あなたのよい読み書きライフの一助となることを願います(堅すぎますかね(笑))。