DeNAのキュレーション事件について、ライター・編集者視点でまとめてみたよ。

こんにちは。エーサです。

先日に世間を賑わせたDeNAのキュレーション事件。
ライター・編集者のぼくとしては他人事ではありませんでした。

その一方で、Webメディアや広告に関わる方々以外は他人事のように感じたかもしれません。
おそらく「え、MERYってパクリサイトだったの?」くらいの印象でしょう。

ですが、実は関係ないとも言い切れません。
なぜならば、大多数の人間がその記事を読み、意思決定をしているはずだからです。

この記事を読んでくださっているあなたも、MERYやWelqの情報を信じていたのではないでしょうか。もちろん全てが嘘、というわけではありませんが。

そこで、いちライター・編集者として2017年現在のWebメディア界隈の動向とDeNAのキュレーション事件の構造などなどをまとめておこうと思います(今更ではありますがw)。

Webメディア界隈の現状

ここ最近はSNS(ツイッターやFacebook、instagramなど)をはじめとして、誰もが簡単に情報発信できる時代です。

ぼくもこうしてブログでアレコレ書いております。

インターネットが発達していない時代は、テレビや新聞(と折り込みチラシ)、ラジオ、電車やバス内の広告、テレアポ、お宅訪問、などが企業の情報を顧客に伝える手段でした。

それが昨今では、ちょ〜う簡単にWebサイトを作れるようになっています。しかも無料で。もしかしたら、1社にひとつはホームページがあるのではないでしょうか。

なぜ会社がWebサイトを作るかというと、あなたが「検索」をするからです。
日常のちょっとした調べもの、買い物、ご飯、旅行、あらゆる場面で検索を使いこなしていますよね、きっと。

ちょっと大げさな表現をすると、いまの世の中は「大検索時代」です。

あなたの検索結果に会社のWebサイトを表示させたいがために、ホームページを作って、情報発信をしてSEO対策をしたりリスティング広告をうったりして、あの手この手でこぞって競争しているんです。

で、その競争に勝ちやすいのが「キュレーション」というメディア形態です。
キュレーションというのは、ネット上に転がっている様々な情報を集めて一覧性を持たせたもののことです(←あくまでもぼくの定義です)。

代表的なものをあげると、スマートニュースやNewsPick、グノシーあたりでしょうか。
いちどくらいは耳にしたことありますよね。

ヤフーのトップページなんかも、キュレーションですね。
ページの真ん中らへんに最近の主なニュースがまとめられています。
まぁ、あんな感じのイメージを持ってもらえればオッケーです。

DeNAが起こしたのはどんな事件なのか?

さて本題です。
DeNAが起こしたキュレーション事件はいったい何だったのか?

簡単に言うと「剽窃(ひょうせつ)事件」です。

キュレーションメディアはインターネット上にある様々な情報をまとめたものですが、DeNAの場合は、他者のコンテンツを剽窃と判断されない具合にリライト(書き直し)して、それをオリジナルコンテンツとして発表していた、という感じです。

詳しい内容はDeNAのホームページにある「第三者調査委員会報告書」をダウンロードして確認してみてください。

まずは、Web上にある記事の作成手順をざっくり説明します。

  • メディア関係者が記事の企画を立ち上げる
  • 企画に基づいて取材等をし、ライターが記事を書く
  • 編集者が目を通し、推敲、関係者に事実関係等を確認していく
  • 記事を修正し、再び推敲
  • 記事を入稿し、公開

大体こんな感じです。
企画や推敲の仕方は会社によってそれぞれだと思いますが主な流れはこんな感じです。

で、DeNAの場合ですが、外部ライターにマニュアルを配布して記事を作成してもらっていたようです。

図解するとこうです。

Screen Shot 2017-05-03 at 3.01.14

※こちらも詳しくは「第三者調査委員会報告書」を参照してください。
(ライターや編集者が素人かどうかは断定できませんし、もう少し複雑です。記事制作の構造をわかりやすくするために今回の図を作成しました)

DeNA内部の人もしくは外部の企画ワーカーが記事企画を大量に作成し、クラウドソーシングサービスを使用してライターに記事を外注。

外部ライターには、依頼時に記事の作成マニュアルを送付します。

外部ライターは、マニュアル通りに記事を作成しWeb上にあるシステムにそれをアップロード、それを媒体毎の編集者がチェックをして、修正依頼をするなどしてそれぞれのページに公開といった流れです。

依頼内容に関しては、クラウドワークスやランサーズで記事作成の仕事を探せばいくらでもみつかります。
マニュアルは、Welq、MERY、FindTraveなど、媒体毎に異なっていたようです。

ぼく個人の見解では、ほぼ全ての記事が外注ライターが作成したもので、ライターや編集者も素人といいますかリテラシーの低い人が多めです。

記事作成を外注すること自体は何ら問題ないのですが、記事の作成方法が問題でした。

先に書いたように、ネット上にある記事をコピーコンテンツとばれない程度に書き換えて「オリジナル記事」として公開している点。

また記事内に使用している画像も、著作者に許可を得ずに無断使用。
これもまた問題でした。

情報の出所がわけわかめで、読者を惑わせるような記事ばかりが散見されていた(という疑い)んですね。

ぼくも被害に遭った

実はこのキュレーション問題、ぼくも被害にあいました。

Screen Shot 2017-05-08 at 17.38.03

FindTravel.jpの、長野県松本市を取り上げた記事に、ぼくのブログに載っている写真が掲載されていました。

参考元としてぼくのプログへのURLが載っているので、流入がちょこっと増える面はありがたいです。

しかし、こんなに小さ〜く表示されていて、かつ記事を見ると「検索!コピー!貼り付け!」のような使われ方をしていました。

画像を無断で使用されるのはあまり良い気分ではないのですが、紹介の仕方が素敵だったら何も言わないようにしようと思っています。

そもそもインターネットって、オープンなものですし。
でも、こんな雑に使わるのは嫌なので、FindTravel.jpに問い合わせをしてみました。

【写真の無断転載に関して】

初めまして。「身軽な編集者」というブログを運営する佐藤英太と申します。この度は、当方のブログに掲載されている写真が、貴サイトに無断転載されている件につきましてご連絡させていただきました。

貴サイトの以下の記事にて、当方のブログに掲載されている写真が無断転載されているものを偶然見つけました。
「オトナ女子に嬉しい美味しいカフェが多い」の部分です。
http://find-travel.jp/article/13229

当方のブログリンクを紹介いただくこと自体は大変嬉しいのですが、無断で、かつこのような使われ方(検索をして、都合のよい写真をあてこんだような)はあまり気持ちよくありません。貴サイトへの掲載を控えていただけないでしょうか。

また無断転載に至った経緯も(たまたまこのような事態になったのか、参考元を記載した場合であればOKとして日常的に運営しているのか)、お伺いしたく思います。

ではお返事お待ちしております。

佐藤

そして、いただいたお返事がこちらです。

佐藤様

このたびはFind Travel内の記事に関し、ご連絡をいただきありがとうございます。

Find Travelは、自由に記事を作成・投稿できる「キュレーションプラットフォーム」となっております。

今回貴サイトの画像がご意思に反して利用されていたとお申し出いただいた件に関しまして
利用規約に従い、該当箇所を削除する対応を行いました。
また、著者に対してはこの旨を共有、連絡という形で注意を行いました。

リポーターの方にはマニュアルを用意しておりまして、
手持ちの画像、商用利用可能なライセンスの画像、掲載許可をいただいているブログ、サイト、パートナー様の画像
じゃらん様、トリップアドバイザー様、楽天トラベル様など多くのサービスからFind Travelへの提供画像

以上に含まれない画像の利用については確認することをお願いしています。
(一部キャプチャ)
https://gyazo.com/46693f8d65a98b54ce7422fae1c633ba

今後同じことが起こらないよう
お申し立ていただいたサイトの画像が投稿されようとしたことを把握できた場合、
画像投稿がなされないよう、システムに登録させていただきました。

これをもって本件への弊社の対応とさせていただきます。

ご面倒をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした。

Find Travel運営事務局

これを読むとどうやら、じゃらん等の一部のサイトからは画像の引用をしても良いと許可をもらっているようです。

それ以外のサイトは確認をするようにと外部ライターに指示をしているとのこと。
しかし、今回は外部ライターが確認を怠っていたために注意をして対応。

ぼくのサイトから画像の引用があった場合は、そうならないようにシステムに登録。
マニュアルに書いてあるから、外部ライターの責任ですよみたいな感じですね。

公開前に確認しておく事項な気がしますが…。
とまぁ、ぼくのブログからも画像が無断使用されていました。

DeNAが起こした事件の一端を感じられたでしょうか。
こういった記事の数が膨大にある疑いが挙げられたんです。

そして大炎上、第三者委員会の調査が入ったという流れです。

 

今後のWebメディア界隈

Webメディア界隈に関わっているいちライター・編集者として、今後のWebメディア界隈について考えてみました。

まずWebメディア自体がさいきん流行し始めたくらいで、これといった絶対的なルールがありません。

ぼくの感覚では、業界全体がサイト製作者の倫理観を以って運用されている感じです。
だからモラルのないサイトもいっぱいあるし、もちろん素敵なサイトもいっぱいあります。

悲しいことに、ここ最近はDeNAのような方法で作成されたサイトが検索上位を占めるような状態がしばらく続いていました(それでも、検索エンジンはかなり検索の精度を上げています)。

それが今回の事件で、情報の出展(情報の出所)に配慮がされるようになりました。
ですから、今後は他人のコンテンツを切り貼りしたデタラメ記事は減少していくとおもいます。
(グーグル先生が一網打尽にしてくださるのが理想ですが)

でも、完全になくなることはまだ無いでしょう。

ぼくはライターという職業柄、毎日のようにたくさんの記事に目を通していると、外注記事(というか出展を大切にしていない)かどうかがパッと見でだいたいわかります。

なのでそういった記事を書いているサイトは一切読みません。
そうして読者の目が肥えていけば、いずれは切り貼り記事量産系のサイトはなくなっていくでしょう。

でも、そう簡単に目が肥えるとも思えない。
なぜかというと、自分がライターをしていなかったらこんな風に記事をかけていないからです。
また自分の友人や家族の話を聞いても「そんな風に作られていたんだ?」という反応をするからです。

DeNAのキュレーション事件のおかげで多少は浄化されるものの、完全になくなることはないと思っています。
なので、この記事を読んでくださっている方には「この情報はどこからやってきたのか?」という点を気にしながら記事を読む癖をつけて欲しいと思っています。

それが巡りめぐって、Webメディア界隈をより便利にする方法です。

ライター・編集者としてのぼくにできること

ライティングや編集の仕事をしている身としてできることは、情報の出所をハッキリさせる、もしくは自分が情報源となった情報発信をすること。

または「これはいいぞ」というWebサイトをまとめて紹介すること(それこそ、キュレーションですね笑)。

あとは、出会った人にこんな風に話をすることでしょうか。いまのWebメディア界隈は、割とめちゃくちゃなので、だんだんと整頓されていくことを願うばかりです。

ぼく自身もまだまだ「情報」や「言葉」との向き合い方を磨いていかねばなりません。

コンテンツには愛を

今回の記事で取り上げたDeNAのキュレーション事件。
一連の騒動の根幹は「コンテンツに対する愛」が足りないことだと思っています。

写真であれ、記事であれ、人は何かを作る以上、多少なりともそこに愛を込めます。
著作物を参照する以上、そこに込められた愛には尊敬の念を払わないわけにはいきません。

コンテンツに対する愛があれば、使用許可を得ることや、コピーをオリジナルと称するすることに罪悪感を感じるはず。

愛が欠けているから、罪悪感なく、そんなことができてしまう(あったとしても強行できてしまう)んです。
とはいえ、ガチャ事業がうまくいかずに次なる柱を求めていた焦りや上司の言うことには従う会社の構造など、他にもいろいろな要因があったことでしょう。

でもコンテンツに対する愛があれば、こんなことにはならなかったんじゃないかなぁというのが、いちライター・編集者としてのぼくの意見です。

自分がつくったものがぞんざいに扱われたら、誰だって嫌ですよねぇ。

それでは。

ABOUTこの記事をかいた人

編集者。メディアづくり・チームづくり・コーチング(編集の)が得意。生きづらさを市場化すべく試行錯誤中。薬を飲むの苦手、手数の多い単純作業苦手、声の大きい人苦手、飲み会苦手。根性叩き直し中。目標はリオネル・滅私。