当記事は、フロイトの精神分析学における、基本的な見方を抜き出したものです。
詳しく知りたい人は本を読めば済む話なんですが「学びたいけど難しそう」と躊躇する人もいる思うんですね。
そんな方向けに(また自分のメモ用として)書きました。
フロイトの精神分析学と、みなさんをつなぐ役割ができれば幸いです。
精神の主人は神 or 人間?
精神を観察するまえにひとつ、抑えておかねばならない点があります。
それは「精神はいったい誰のものなのか?」ということ。
宗教に馴染みの薄い日本人には分かりづらいんですが、昔は「精神は神に見守られている」という考え方が主流だったようです。
ですから狂気に陥った人たち(おそらく幻覚や幻聴などによって精神が崩壊)は、「精神が神に見放された人たち」あるいは悪魔や悪霊など「人知を超えた存在に侵された」と捉えるのが常識でした。
この境目となったのが1789年(フランス革命が起こった年)ころで、人間の精神は、人間が自分で世話するものだという考えがされるようになりました。
やがて19世紀の始めに「精神医学」という言葉が作られると「狂気は人間が観察するべきもの」という見方が当たりまえになってきます。
つまり精神医学が確立される以前には「人間精神のお世話係は、神or人間?」というせめぎ合いがあったということ。
人間精神の解明に「人知を超えた存在を考慮するか否か」が議論されるようになり、考慮しないようになったという流れがありました。
神は信仰の対象ではありつつも「でも人間精神を支配する存在ではないよね」という風に捉え方が変化していったのだと思います。
自己を語っているのは誰なのか
人間精神に対する、フロイトの主張はこうでした。
「自己は、自己自身によって知らないうちに認識され、語られている」
つまり自分で自覚していないだけで、自分に関することは「既に知っている」らしいのです。自分の知らないところで、無意識のうちに、自分自身に対する認識が語られている。
「本当にそんな現象は起こりうるのか?」と思いますよね。
フロイトは以下のような実験を根拠に「知っていることを知らない現象」が起こるとしています。
▼ 実験手続き概要 ▼
└実験者は、一人の人間(男性)を夢遊状態にし、できるかぎりの幻覚を経験させてから目を覚まさせた。
└実験者は、被験者に、催眠状態中に何が起こったかを話すように求めた。
└被験者は何も思い出せないと主張する。
└実験者は「きみは知っているのだ。それを思い出さなければいけない」と命令する。
└被験者ははじめは暗示された体験の一つをおぼろげながら思い出す。
└つづいて他のものも思い出し、最後にはあますところなく思い出した。
***
※実験者はフロイトではなくリエボー、ベルネイムという2名の精神医学者です。
リエボー:(1823~1904)ベルネイムとともにナンシー学派を指導し、催眠法の研究者としして知られるフランスの精神医学者。
ベルネイム:(1837~1919)フランスの精神医学者。催眠法および暗示性についての研究をおこない、彼の催眠状態中の事件の追求の実験は、フロイトの回想の強制法と自由連想法の発送の機縁となった。
(参考元:『フロイト 精神分析学入門』)
被験者は当初「何も思い出せない」と言っていました。にもかかわらず、実験者の問いかけによって、催眠状態中に起こったできごとを次々に思い出しています。
故に「自分があることについて知っている」という事実を知らない、という現象が起こりうるのだというのがフロイトの主張です。
「では語ってるのは誰なのか?」
「語られている内容は何なのか?」
という疑問が湧いてきますね。
おそらくこの答えを明らかにすることが、フロイトの精神分析学の根幹だと思います。
精神分析学の「自由連想法」と「夢判断」
精神分析学の根っこにあるのは「無意識に語られている内容」を明らかにしていくこと。フロイトはその手法として人間の見る「夢」に注目しました。
夢の要素については、それが本来的なものでなく他のあるものの代理物であるという見解を思っています。代理物とは、夢を見た人が自覚していないが、その人の心の中にはその知識が存在しているはずの、あるものの代理物を指しています。
私どもの技法は、こうした要素についての自由連想によって、別の代理物を浮かびあがらせ、それにもとづいて隠れているものを推測しうるようにするということなのです。
『フロイト 精神分析学入門Ⅰ』p.167
要約すると、
・夢の要素は「あるもの」の代理物
・では何の代理をしているのか?
・その内容を、自由連想法によって探っていく
となります。
夢に登場する要素は、何かのメタファーとして登場しているという見方です。自由連想法はザックリといえば頭の中に浮かんだことの全てを言語化すること。
その内容によって「語られている内容」を分析していくようです。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
フロイトの見方(に対するぼくの解釈)を説明しました。
ポイントをまとめると
・精神の主人は神or人間?
・自分に対する認識は、自分の知らないところで既に語られている
・夢は語りの代理物(メタファー)
となります。もし『フロイト 精神分析学入門Ⅰ』を読む場合は、この3点を抑えながら読み進めるとグッと頭に入りやすくなると思います。