※当記事の概要
中程度の感音性難聴者として、感音性難聴の実態を執筆したもの。
中程度の感音性難聴の当事者として、一般的に言われている定義や症状と、筆者が生活している上での症状とをまとめました。
感音性難聴って?
一言でいうと「音(振動)を電気信号に変えて、脳に伝える機能がうまく働かない」障害です。
難聴には主に、伝音性難聴と感音性難聴とがあるそうです(参考元:2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ)。
耳が音を言葉にするには、次の2つの段階があります。
・音を振動として耳の奥へ伝える段階。
・振動を電気信号に変換して脳に伝える段階。
伝音性難聴は前者の段階で障害が起きるもの。
感音性難聴は後者の段階に障害が起きるもの、という感じです。
筆者は上記2つのうち感音性難聴(中程度)を患っています(中学生時代に発覚)原因は全くわかりませんが、祖父も父も難聴のため恐らく遺伝です。
聞こえる音・聞こえにくい音
これは「オージオグラム」という図表で、縦軸に音圧・横軸に周波数をおいて耳の聞こえをあらわしたものです(参考:オージオグラムの見方と検査数値から見る耳の聞こえにくさ)。
グラフの線が下にいくほど聞き取りづらいという風になっています。健康なひとのグラフは0〜25dBあたりで、ほぼ横ばいになります。
筆者の聞こえやすい領域は125〜250Hzで125Hzは男性のいびきの音にあたるそうです。音響系の製品を販売するユニペックス株式会社のPDFには「腹にこたえる低音」との記載がありました。
余談ですが、ぼくはいびきの音がこの世でいちばん嫌いです。
よーく聞こえるせいかもしれません。
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聞こえにくい領域は1000〜4000Hzで、こちらはちょっとわかりやすい例示が見つかりませんでした(4000Hzは蝉の鳴き声と書かれているサイトもありましたが、なんか違う気が…)。
Youtubeかなんかで調べると手軽に聞けます。わりと、高い音です。そして、4000Hzの領域を超えるとまた聞こえるようになるんです。
そのため筆者の場合、単純に「高い音が聞こえない」というわけではないのです。超ぉ〜う高い音は聞こえます。飼い猫の鳴き声とかは普通に聞こえます。だから、両極端なんですね。
他の方はよくわかりませんが、軽度〜中度の感音性難聴がある人は、けっこう聞こえ方にばらつきがあるんじゃないかなぁというのが当事者の感想です。
視力とは違うので、どんな音が聞こえにくいかって、なかなか自分でもわかりづらいんですね。わざわざオージオグラムをお医者さんからもらって周波数帯域特定して「それはどんな音なのか?」なんてブログに書く人間はごく少数ですから笑
同じような症状がある方は、面倒な説明をする手間を省くために筆者のブログをじゃんじゃん使ってください。
感音性難聴のその他の特徴
他にも自分自身の経験をもとに、特徴をまとめてみました。こっちの方が、よりリアルでイメージしやすい情報かもしれません。
音そのものが聞こえにくいわけではない。
音そのものが聞こえないわけではありません。救急車の音とかはめちゃめちゃ聞こえますし、居酒屋、ライブハウス、ナイトクラブのようなガヤガヤしている場所では耳が痛くなります。
体感としては、会話をする際に「音情報が言語に変換されるまで」になんか、障害が起こっている感じです。音が耳に入ったのに、あれまだ言葉に変換されないぞ、みたいなタイムラグを感じることもしばしばです。
距離が離れると、急激に聞き取りにくくなる
これが最も辛いです。対面で会話するぶんには全く問題ないのですが、1mくらいですかね、ちょっと離れると急激に、ぼやぁっとするんです。
筆者はこれを「音(ことば)の輪郭がぼやける」と言っているのですが、なかなか通じた試しがありません。個人的にはこれがベストの表現なのですが、音の輪郭っていう感覚にどうも馴染みがないみたいで、なかなか通じません。
スピーカーから出る音が聞き取りづらい
これもあまり伝わらないです。スピーカーから出る音と生音の聞き取りやすさが全然違うんです。例えば電車やバスの車内放送。あれ、なかなか聞き取れません。
たまにすっごい声が小さい人がいて、なにひとつ聞き取れないこともありました。近頃は自動音声案内が充実したり、電光掲示版に表示されたりとするのでその点は助かっています。
一旦デジタル音声に変換されているせいなのか、巷で使用されているスピーカーのイコライジングが筆者の耳に合ってないのか、スピーカーから発せられた時点で音の輪郭がぼやけている感じです。
音情報を言語に変換する速度が遅い
さっきちょっと書いたやつですね。音が振動として耳に入って、電気信号に変換されて脳に伝わって、さらに言語に変換される。この言語に変換される部分のスピードがどうも、遅い感じがするんです。
友達と会話をしていて聞き取れず「えっ?」と聞き返した0.5秒後に急にパッと言葉が登場することがよくあります。その現象を期待して敢えて聞き返さずに会話をしたとしましょう。
すると「え、いまの間、なに?」と、変な間が発生することになります。会話はリズムが大事ですから、これはマジで大変です。
相手が渾身のボケをかましてきた時にベストなタイミングでつっこめないor聞き返す という、どう転んでも面白くないパターンのやつです。
筆者はこれを「ボケ殺しの耳」と呼んでいます。今までに何百、何千というボケを殺してきました。
英語の子音がめっちゃ聞きづらい
これも、英会話をするときにちょっと面倒です。日本語は子音+ 母音(koとかsuとか)で音が作られているので、一つひとつの音がはっきりしていて聞こえやすいです。ところが英語はtsとかthとかksとか、子音が重なるパターンがわんさかあります。
周波数が高いのかなんだか知りませんが、これがまた聞こえづらいのなんの。TOEICリスニングとか、多分ちょっとだけ不利です。
こうしていただくと聞こえやすい
実は感音性難聴って、ただ大きい声で話しても、聞こえやすくなるわけではないのです。音量に対する感度は周波数帯域によって異なるので、大きい声で話されてもうるさいだけの時もあります(お気遣いは大変嬉しいのですが…)。そこで、聞こえやすくなる方法を紹介します。
音の初速を早くする
簡単に言うと「ハキハキ話す」という感じですかね。イメージとしては、息を「ハッ!」と強めに吐きながら声を出している人はとっても聞き取りやすいです。劇団に所属している人とか、歌手の方とか、発声に気を配っている人の声はとても聞き取りやすいです。
呼吸が浅く、口呼吸(まさに筆者がそうなんですが)の人の声は聞き取りづらいです。音の輪郭がぼやっとしていて、音そのものは拾いつつも、言葉としての認識はあまりできません。
近い距離で話す(1m以内)
これが一番簡単な方法ですかね。中程度の感音性難聴であれば、だいたい1m以内の距離なら問題なく聞き取りができます。とっても不思議なのですが、ちょっと距離が離れると、ガクンと聞き取りの精度が下がるんですよねぇ。
正面や後ろより、横の方から話す
正面や後ろから話しかけられるよりも、横からの方が聞き取りやすいです。おそらく、音が耳に対して正面から入ってくるためでしょう。
したがって、1m以内の距離で、横から、ハキハキと話しかけていただけると聞き取りやすくなります。ゆっくり話してくださる方もいらっしゃるのですが、ハキハキとする方が効果は高いです。
番外編:LINEで補う
LINEで補うという方法もあります。どんなに聞き取れなくても、これで一発解決です。友達同士で会話をしていて、あまりにも聞き取れなかった際(まわりの騒音がひどいなど)にはこうしていました。
ボケ殺しをしてしまったときにこうすると、じわじわと、また違った種類の笑いが込みあげてくることもあります。「さっきのタイミングで、こんなボケをかましてきたのか、なるほど。では今後は予測しておいて、聞き取れるようにしておこう」といったボケ殺し対策をとることもできます。
ほんとうに、現代に生まれてよかったなぁ。と思います。
感音性難聴ゆえの悩み
なかなか理解してもらえないというのが悩みです。感覚を共有することが難しいからですね。
例えば視力であれば、高齢者の見えを体験するめがねとか、アイマスクを使えば目が見えない状態は作れますよね。
聴力の場合、特に「音が言葉になりにくい」という状態は再現のしようがありません。ですから、なかなか症状を伝えることが難しいんですね。
ましてや初対面の人に「はじめまして、難聴持ちの〇〇です」なんて切り出しかたはしにくいですし。しょっぱなから伝えられるといいんですが「そこまでひどくもないしなぁ、大げさに捉えられても嫌だし」と、気持ち的には言いづらいです。
この悩みに関しては、耳の形(結構リアルなやつ)をしたピアスをつけて、会話のキッカケづくりでもしようかなと画策中です。
---▼ 更新情報(2018年11月) ▼---
耳の形をしたアクセサリーを制作しました。
「みみみみ」という作品名で販売もしています。
終わりに
感音性難聴の実態、なんとなくイメージしていただけたでしょうか。ひとまずは、感音性難聴というものがあること知っていただければ幸いです。
「感音性難聴なんです」という方に出会った時は、ここに書いてあることを思い出していただけると大変嬉しいです。「あっ知ってる!」なんてことを言ってくれた人に出会ったら、その人のことを好きになるかもしれません。